新しいトヨトミに
出会えるWEBマガジン

2023/7/14

4000枚を超えるレコードとクラフトビールのバー/manu’a beer club(マヌアビアクラブ)

 渋谷は坂道が多い街だと思う。過去の記憶を呼び起こしても、渋谷での思い出の僕はいつでもどこかに向かって坂道を上ったり、または下ったりしている。

 そして今日も僕は渋谷駅から坂を上り、目的地に向かって歩いている。その日は6月。真夏のように暑い。絡みついてくるようなぬるりとした風。やたらとビールが飲みたくなる日だった。

 訪れたのは、『manu’a beer club(以下、マヌアビアクラブ)』。店主の磯村さんが十代の頃からセレクトした和洋、年代を問わない良質なアナログレコードを聴きながら、こだわりのクラフトビールが楽しめるバーである。

美容師時代に訪れたレコードバー
『こういう生き方があるんだ』と思った

「ここには4千枚くらいのレコードがありますね。すべて自分のコレクションです」

 そう話すのは店主の磯村さん。4千枚を超えるレコードは磯村さんが高校生だったころから少しずつ集めたもの。もともと最初にレコードにハマったきっかけはなんだったんだろう。

「三つきっかけがあるんですけど。一つはゲームセンターでビートマニア(※)っていうゲームが流行ったこと。二つ目がDJ KENTAROって方がレコードの世界大会で優勝したこと。そのニュースの映像がすごくかっこよかったんですね。あとは兄貴がヒップホップのCDを買い始めて、そういう音楽を聴くようになったこと。その三つがわりと同じような時期に重なって、それでレコードを集めるようになりました」

※1997年に稼働したアーケード用音楽ゲーム。 5つの鍵盤とターンテーブルを使い音楽を演奏する。 その後に続く音楽ゲームのブームのきっかけとなった。

 趣味でレコードを集めていた磯村さん。自分でお店を開こうと思った理由について聞いてみた。

「21のときに美容室への就職で東京に出てきたんです。そのときはまだ独立して何かやりたいとかそういう気持ちもなくて。あるとき、その美容室のオーナーさんから『友達のお店があるから行こう』って誘われて。それで連れていってくれたところが、こういうレコードを流すバーだったんです」

 入った瞬間に鮮烈な印象を受けたのだという。『自分がやりたかったのってこれかも』と思った。

「それまでは自分が何をやりたいのか、あんまよくわかってなかったんです。名古屋で美容の専門学校で学んで、就職で東京に出て来て。美容師という職についてはみたけど、でも本気でそれがやりたいのかはよくわからなかった。そのバーに入った瞬間に『あ、こういう仕事あるんだ。こういう生き方があるんだ』って初めて知って。それで僕もこういうお店やろうと思ったんです。それからオープンまで10年以上かかりましたけど」

誰でもラフに
レコードを楽しめる
場所にしたかった

 近年は世界的なレコードブームだ。日本国内の2013年アナログレコード生産実績は約4億円。それが2022年には約43億円となっており、10年弱で10倍以上の市場規模に拡大している。アメリカでは2020年に1986年以来初めてアナログレコードの売上がCDの売上を超えたのだという。

 その人気を支えているのは若年層のユーザーだ。シティポップの流行、レコードジャケットのファッション化など様々な要因があると思うが、やはり何よりもデジタルとは違うアナログな音質、そして音楽を流すまでにかける手間が音楽を聴く楽しさを再認識させてくれるのだろう。

「うちに来る客層も20代から30代の若い人が多いですね。詳しい人もいれば、まだ興味を持ったばかりという人もいます。こういうバーって結構年配の方がやっていることが多くて、そういうところは結構敷居の高い場所が多い。僕は誰でもラフに来てもらえる場所にしたかったんです」

「レコードに興味はあるんだけど、『何から買ったらいいのかわからない』とか、『名盤と呼ばれてるあのレコードってそんなにいいの?』とか、そういうライトなことでも気軽に聞いてもらえるような空間にしたかったんですね。僕もレコードの世代じゃないからこそ、馴染みのないところから趣味にするときにどんなことに悩むのかっていうのがわかるので」

 磯村さんが思うレコードの魅力はどんなところなのだろう。

「無駄のない音の綺麗さっていう意味で言えば、CDとかデジタルの方が全然上なんですけど、『聴いてて気持ちいい』のがレコードなのかなって思います」

 その気持ちよさにはある理由があるのだという。

「レコードは盤の上を針が通ると音が出る。物理的に鳴っていて、レコードそのものが音楽なんですね。あとCDの音って人間に聞こえないレベルの周波数はデータ削減のためにカットしている。レコードにはそういう音も全部入っているんです。入っているからといって認識できるわけではないんですけど、でも実際にその音は流れていて、だからこそ動物的なところに訴えかける何かがあるんだと思う」

8種類のクラフトビール
好みのビールを見つける楽しみも

 こだわり抜かれたセレクトによって提供されるクラフトビールもマヌアビアクラブの特徴だ。

「選べるクラフトビールの種類は8種類です。サイズはワンパイントかハーフパイントのどちらか。ボードを見てお客さんに頼んでいただく形ですね。8種類あるんで、スタイルと産地がなるべくばらけるように選んでいます。今だと、ニューヨーク、静岡、京都、北海道とかそんな感じです。全国というか、もう世界中ですね。 他ではなかなか飲めないものをセレクトして提供しています」

 もともと下北沢でカクテルとアナログレコードのバーを運営していた磯村さん。下北沢から渋谷への移転にともなって、クラフトビールを始めたのだという。

「移転にあたってもう1つお店の核になるものが欲しいなあと思っていて。ちょうどそのときにハマっていたのがクラフトビール。レコードとクラフトビールを本気でやっているところってあんまりないのでいいかなって」

 クラフトビールのラインナップは1ヵ月くらいで入れ替わるのだという。なので、そのときだけしか飲めないということもある。磯村さんにおすすめのビールを聞いてみた。

「静岡ですごい人気のところで『WEST COAST BREWING』の『Slow Motion』ですね。今、人気のスタイルのヘイジーIPA。音楽との親和性が高いビールですね。おいしいし、面白いって感じです」

 ヘイジーIPAの特徴はその深いにごり。少しとろっとした飲み口がジューシーで果実の皮のような程よい苦みと爽やかな香りが余韻として残る。

「あとは『Captain Lawrence』の『Hop Commander』。本場のアメリカのクラフトビールって感じですね。なんか変に甘いとかじゃなくて、香りもよくてしっかり苦みもあって。ビール好きに刺さるビールですね」

冷蔵庫にあるビールを購入することもできる

ひと手間かかるから
機能性とは別の価値が生まれる

 店内にはGEAR MISSIONのレインボータイプ『RR-GE25』のコヨーテブラウンが置かれていた。冬が終わって家に仕舞っていたものをわざわざ撮影のために店舗まで持ってきていただいたのだという(ありがとうございます!)。購入したきっかけについて聞いてみた。

「趣味で嫁さんとよくキャンプに行くんです。だからきっかけはキャンプですね」

 冬場はお店が開いている日は店内で使用して、日曜の休みの日に店からストーブを持っていくのだという。

「最初はキャンプなんですけど、『あ、店でも使えるじゃん』って思いまして。お店にも馴染んでいて買って良かったです。何よりストーブ使っていると乾燥しない。エアコンだけだと、すごい乾燥しますから」

 アナログレコードと石油ストーブには共通点があると磯村さんは言う。

「レコードってちょっと手間をかけて贅沢に音楽を楽しんでるっていう感覚があると思うんですね。レコードを拭いて、針を落として。その手間があるから音楽を聴くのがもっと楽しくなる。石油ストーブもそうですよね。電気だったらスイッチを入れて終わりだけど、石油ストーブは灯油を入れて、火をつけて、使い終わったらたまに手入れして。でもそのひと手間があるからこそ、アイテムに機能性とは別の軸で価値が生まれてくる」

無理のない範囲で
楽しんでもらえれば

 これからのマヌアビアクラブはどういったものになっていくのだろう。

「お店に関してはわりとやりたいことできてるんで、そんなに追加でやりたいことはないですね。ビールを自分で作りたいってくらいです。だから、新しいことよりは、レコードとかビールとか今好きなものをもっと深化させたいですね。レコードはいつか3万枚くらい集めたいなと思っています」

 最後に、アナログレコードに興味を持った人が最初に買うならどんなレコードがいいかを聞いてみた。

「自分が今好きなアルバムでいいと思います。それをレコードで買ってみるのがおすすめですね。 内容は一緒なんですけど、こうやって自分で色々セッティングしてレコードの音で聴いてみると、全然違った楽しみ方ができる」

 ただ、と磯村さんは言う。

「レコードはお金も場所もかかるんで、ほんとの趣味にするには覚悟が必要だと思います。僕自身、レコードが原因で長く付き合った彼女に振られたりしたので。皆さんはそれで不幸にならないように気をつけてもらえれば(笑)。無理のない趣味の範囲で楽しんで、疲れたらうちに来て楽しんでもらえればと思いますね」


ご紹介したストーブ

RR-GE25 コヨーテブラウン
GEAR MISSIONのレインボータイプ
https://www.toyotomi.jp/products/heating/convection/gear-mission/rr-ge25


紹介した店舗

【manu’a beer club】
住所:〒150-0044 東京都渋谷区円山町5-14 スタービル 2F
営業時間:18時~25時
定休日:日曜
(営業時間・定休日について詳しくは公式WEBサイト・公式SNSをご確認ください)
電話番号:080-2677-8407
公式WEBサイト:https://manuabeer.storeinfo.jp/
Instagram:https://www.instagram.com/manua_beerclub/


※本記事に掲載の情報は2023年7月時点のものです。
※撮影したモデルは現在販売しているモデルと外観が一部異なることがあります。


photo / asai
interview & text / gambe


その他おすすめのトヨトミーツ

Other Contents

Products

トヨトミの製品

Pick up

おすすめ情報

ONLINE STORE

私たちが誠意をもって直接お届けいたします

送料無料

ご注文金額が
5,500円(税込)以上の場合

ストーブ

公式限定モデル

公式ECショップのみの
限定商品も多数取り揃え

パーツ販売

長くご利用いただいた
消耗部品のパーツ販売

BONFIRE STAND

冒険は火から始まる。

CLICK