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トヨトミの3製品が2023年度グッドデザイン賞を受賞!担当デザイナーに開発秘話を聞いてみました。

 ペレットストーブ「vifu(ヴィフ)」、自衛隊仕様ストーブ「宿営暖房I型」、GEAR MISSION赤熱対流形モデル「RR-GER25」の3製品が2023年度グッドデザイン賞を受賞しました。今回、受賞した「vifu(ヴィフ)」のデザインを担当した浅井さん、そして「宿営暖房I型」と「RR-GER25」のデザインを担当した山本さんに製品のアイディアが生まれたきっかけや実現に至った経緯など、トヨトミ社員も知らない開発にまつわる色んな裏話を聞いてみました!

▾目次
 ・商品企画室の浅井さんに聞いてみた。
  ・vifuについて
 ・商品企画室の山本さんに聞いてみた。
  ・宿営暖房I型について
  ・RR-GER25について
 ・取材後記
 ・受賞展詳細
 ・製品詳細

商品企画室の浅井さんに聞いてみた。

 ペレットストーブは、石油の代替資源として利用が進むバイオマスエネルギーを利用したストーブで、燃料として、山林の伐採、木片、端材、木くずなどから生成された木質ペレットを使用しています。CO2の排出量と吸収量を均衡させ、その排出量を「実質ゼロ」に抑えるカーボンニュートラルに貢献する製品です。

 先日、新発売されたペレットストーブ「vifu」。デザインを担当したのは商品企画室の浅井さん。入社3年目にして、企画立案から製品リーフレットの制作までvifuに関わるすべての業務において主導的な役割を果たしました。

vifuについて

-まずグッドデザイン賞受賞おめでとうございます。受賞の報を聞いて率直にどんな気持ちでしたか?

浅井:ありがとうございます。素直に嬉しかったですね。周りからは「きっと取れる」とは言われていたんですけど、受賞を聞いた瞬間は「よかった」とほっとしました。

-そもそもどういった経緯で今回の企画に携わることになったんでしょうか?

浅井:もともとPE-8というペレットストーブがあったんですが、そのリニューアルを行うことが社内で決まっていました。当時、私は1年目だったんですけど、山本さんから「こういう企画があるんだけどやらない?」って言われて。

-言われたときはどんな気持ちでした?

浅井:「こんなに早く担当になっちゃっていいの?」と思いました。私自身デザインをやりたいって気持ちはあったし、いつかとは思っていたんですけど、「早すぎない?」って(笑)。多分、普通の会社だったら最初の2,3年は先輩社員のアシスタントをしながら経験を積むっていうところがほとんどだと思うんです。だからなんで私に任せてもらえたのかというのは山本さんに聞いてみたいですね(笑)。

-山本さん、いかがですか?

山本:まあ僕が決めたっていうわけではないんですけど(笑)。自分は前のモデルのPE-8を作ったんですけど、発売から時間が経っていろいろ変えたい部分が出てきていたんです。誰もやらないなら自分がやるけど、誰かがやってくれるなら、その人の成長って意味でもその方がいいかなとは思っていました。

-なるほど。でも1年目の何も知らない状態だと大変ですよね。

浅井:そうですね。でも自分としてはありがたい気持ちの方が大きかったですね。「私でいいの?」とは思っていましたけど。

山本:僕自身もPE-8をつくったとき、そんな感じだったんですよ。もともとペレットストーブを担当していた人が辞めて、何も知らない状態で自分が担当することになった。でもデザインをやっていく中で、製品のこと、部品のこと、社内的な進め方とかいろんなことが学べた。だから浅井さんにもこの企画をそういう材料にしてもらえればいいかなと思っていました。

浅井:他の製品だったら、もっと難しかったと思うんです。ペレットストーブっていうトヨトミの中では比較的新しい製品だからこそ挑戦できたと思います。

-後継機をつくるということの難しさもあったと思います。デザインする上でどういった部分を大切にしていましたか?

浅井:私自身が販売店を回って、色んな人にお話を伺う中でわかったことなんですけど、PE-8ってすごく多くの人に愛された機種だったんですね。なので、販売店の人たちやユーザー様の声を聞いて、愛されてきた部分は残しつつ、よりよくなるようにデザインしたというような感じです。

-変更された部分で大きなポイントはどこでしょうか?

浅井:もともとは一見工業製品っぽいイメージがあったんですが、ぱっと見た第一印象で「いいな」と思ってもらえるような外観にしたいと思っていました。そこで燃焼窓が大きく見えるように仕上げました。実際には前のモデルからそこまで大きくなっているわけではないんです。ただ目線がそこにしか行かないようなデザインにすることで、燃焼窓から見える炎をより強いインパクトで感じられるようにしました。

-前扉と上部にあるステンレスのハンドルも印象的ですよね。

浅井:そうですね。このハンドルはコスト削減のために違うものにした方がいいという意見も出ていたんです。でもこれがあることでvifuのオリジナリティが生まれたと思っています。

-今回大変だったことはありましたか?

浅井:コストとデザインを両立させることです。どうしてもこだわりたかったのがガラスの燃焼窓とステンレスのハンドルだったんですね。でもコストを抑えるためにはまずその二つを変えた方がいいという意見をいただきました。そういう中で上手くバランスをとってコストを抑えながら良いデザインを追求していくというのが難しかったですね。

-そういった議論の中で心が折れることはなかったですか?

浅井さん:でも、そこは絶対に守りたい部分だったんですね。そこで折れなかったからこそ、自分が納得できる製品になったし、今回のグッドデザイン賞受賞という評価をいただけたと思っています。

-無事発売に至って、現在の思いはいかがですか?

浅井:ほっとしています。あとは感謝しかないですね。vifuのデザインを通して何よりも自分が成長させてもらえたと思っています。入ってすぐの何の実績もない私にこんなふうに任せてもらえて経験を積ませてもらえた。ほんとにトヨトミありがとうって感じです(笑)。

-最後の質問です。今後ペレットストーブを使いたいですか?

浅井:いつか使いたいですね。今住んでいる部屋はまだペレットストーブを使うような環境ではないんですけど、いつかは絶対に使いたいと思っています!

商品企画室の山本さんに聞いてみた。

 2022年10月から予約販売を開始し、発売から間もなく売り切れとなった自衛隊仕様ストーブ「宿営暖房I型」。多くの反響を受けて、現在再販売中の大人気モデルです。そして、2019年に発売を開始し、現在もアウトドアユーザーからの支持を集め続けているGEAR MISSIONシリーズの新作、赤熱対流形モデルの「RR-GER25」。そんな二つの製品のデザインを担当したのが山本さんです。

宿営暖房I型について

-宿営暖房I型が生まれたきっかけを教えていただけますか?

山本:最初のきっかけは、自衛隊で使われている飯盒(はんごう)が一般販売されるとYoutubeで紹介されているのを見たことですね。

-飯盒って子供のキャンプとかでよく使うあれですよね。

山本:そうですね。普通の飯盒って4合とか5合炊きのものが多くて結構でかいんです。その自衛隊仕様の飯盒は、一人で山に入って時間がない中で食べるというリアルな現場を想定しているからすごくコンパクトで、ソロキャンプが好きな僕みたいな人でも使いやすい。自衛隊で実際に使われていたというストーリー性とか純粋な機能に魅力を感じて、動画を見たときすぐに欲しいなと思いました。

-それがどのように「宿営暖房I型」に繋がったんでしょうか?

山本:背景として、もともとトヨトミは長年自衛隊にオリジナルのストーブを納めていたんですね。だからそのアイディアをそのまま活かせるんじゃないかと思いました。自衛隊仕様にしかないストーブガード、特別カラーのストーブを一般の方に届けられるようになったら面白いかなって。

-トヨトミが自衛隊にストーブを納品しているということを知らない人も多かったと思います。

山本:この企画を一緒に考えていた販促企画課のOさんが自宅で旦那さんとお話しているときに、トヨトミが自衛隊にストーブを納めていることが話題に出たみたいなんですね。そのときの旦那さんの反応が「それすごいじゃん!」って感じだったらしくて。宿営暖房I型を発売することで、トヨトミのストーブが自衛隊の方々に長く愛用されているということを一般の人たちに知っていただく良い機会になるんじゃないかとも思いました。

-プロモーションではさまざまな媒体とコラボも行いましたね。

山本:そうですね。こういう特徴的な製品だったので、これまでにはできなかったようなことをやりたいなと思っていて。それで元自衛官のかざりさんにモデルになっていただいたり、サバゲーフィールドやアウトドアショップで期間限定の展示を行わせていただいたりしました。上手くいった部分ともう少しこうしたかったという部分がありますけど、どちらにしてもやってみてよかったなとは思っています。

-山本さんが思う宿営暖房I型の良さを教えてください。

山本:やっぱり見た目ですね。あとは雑に使っても味が出ること。キズやへこみがむしろ味になっていくアイテムになっていると思います。

-なるほど。では最後にこれからの宿営暖房の展望などあればお聞かせください。

山本:そうですねえ。僕個人の思いで言うと、こういう特徴的な製品って毎年定番で販売してしまうと、かえってその製品の価値を損ねていく部分があると思うんですね。だから一度立ち止まってみるのもありかなと思っている。

-何年かに一度販売を行った方がいいということでしょうか?

山本:はい。自衛隊でずっと長く愛されているストーブだからこそ、一般の人にも長く愛され続けるストーブになってほしい。それがベストな方法かはわかりませんが、とにかく製品の価値を大切にして販売していければと思いますね。

RR-GER25について

-続いてGEAR MISSIONのRR-GER25が生まれたきっかけを教えてください

山本:GEAR MISSIONで一番最初に展開した3機種が高火力のラウンドタイプ、レインボータイプ、ラジエントタイプだったんです。ラウンドタイプがGEAR MISSIONのコンセプトの中でもっともシンボリック的な存在で、少しコンセプトから外れていると僕の中で感じていたのがレインボータイプでした。

-でもレインボータイプも人気でしたよね。

山本:そうですね。ただ僕はレインボーという機能が人気の理由の一つだったと思っていて。レインボーという機能自体にはGEAR MISSIONが掲げている「無骨さ」はない。見た目もタンク部分が丸くてどこか柔らかい印象で、いいストーブなんだけどどこかGEAR MISSIONらしくないと思っていました。なので、その後継モデルとして、よりGEAR MISSIONらしいストーブを作りたかったんです。

ラウンドタイプのKS-GE67(左)と赤熱対流形のRR-GER25(右)

-どういった部分を変更したのでしょう?

山本:まずガラスをなくし、赤熱の燃焼筒に変更しました。レインボータイプの長所は40W相当の明かりになる柔らかい光ですが、アウトドアユーザーはすでにランタンを持っているという人が多い。だからRR-GER25では、明かりとしての機能が強いガラスではなく赤熱の燃焼筒にすることで、側面もしっかり暖かさを感じられるようにしました。

-タンクの形状も変更されていますね。

山本:そうですね。もともと丸みのあるフォルムだったんですが、ラウンドタイプのタンクと同じ形状にすることで見た目にも「無骨さ」を感じられるデザインにしています。

-RR-GER25の構想自体はいつ頃からあったんでしょうか?

山本:最初からですね。GEAR MISSIONが発売した2019年から。ただ最初の段階ではイニシャルをかけずに今あるストーブを活かして作ろうと思っていたんです。GEAR MISSIONというシリーズが軌道に乗り始めたら、この赤熱対流モデルを作りたいと思っていて。

-発案時から数年先を見据えていたんですね。

山本:そうですね。だから本当のことを言うと、今のラインナップの状態もまだ途中なんです。最終系が自分の中にはあるんですけど、それはまだ言えません(笑)。

-あとはいつもは撮られることを嫌がる山本さんがPR動画、画像のモデルをつとめたことも驚きでした。なんで今回依頼を受けたんでしょうか?

山本:今回もすごく嫌でしたね。本当に嫌だったんですけど、撮影を担当した同じ商品企画室のNさんが真剣に手を抜かずに撮るタイプの人だったから。ちゃんと全部いろんなことを考えて、綺麗なモデルさんを撮るくらい丁寧に撮ってくれるっていうのがわかっていたので(笑)。そういう人からの依頼だったから断り切れなかったですね。Nさんからの依頼じゃなかったら断ってると思います。

-Nさんへの信頼があったんですね。モデルとなったことで周りから反響はありましたか?

山本:そうですね。Youtubeに動画を出しているんですけど、うちの子供がその動画をめちゃくちゃ見てくれて。それを見たときは普通に嬉しかったですね。どんな感情で見ていたかはわかんないですけど。

-最後にこれからのRR-GER25、そしてGEAR MISSIONの展望を聞かせてください。

山本:さっきもお話しましたが、GEAR MISSIONはまだ途中の段階です。最終系はまだ先になると思いますが、ユーザーの方はぜひこの先のGEAR MISSIONを楽しみにしていただければと思います。

取材後記

 今回は商品企画室の浅井さんと山本さんにお話を伺いました。受賞の喜び以上にお二人の製品への愛情みたいなものが感じられるいいインタビューになったと思います。

 今回の受賞製品は、『2023年度グッドデザイン賞受賞展』で2023年10月25日(水)から10月29日(日)まで東京ミッドタウン内各所にて展示予定です。

 またペレットストーブ「vifu」はグッドデザイン賞審査委員一人ひとりがお気に入りを紹介する企画展『私の選んだ一品』にも選出されました!こちらはGOOD DESIGN Marunouchiにて11月8日(水)~11月30日(木)に展示予定です。

 ご興味を持った方はぜひ足を運んでみてはいかがでしょうか。


●受賞展詳細

グッドデザイン賞受賞展「GOOD DESIGN EXHIBITION 2023」
会期: 10⽉25⽇(⽔)〜10⽉29⽇(⽇)
時間:11:00〜20:00 (10⽉28⽇は21:00閉場、10⽉29⽇は18:00閉場)
会場:東京ミッドタウン内各所(東京都港区赤坂9-7-1)
⼊場無料(混雑状況により⼊場制限を⾏う場合があります)

グッドデザイン賞審査委員セレクション 私の選んだ一品 2023―デザインのよろこび―
会期: 10⽉5⽇(木)〜11⽉30⽇(木)
※ vifuの展示期間は11/8(水)~11/30(木)
※ 10月23日(月)~10月31日(火)まで特別企画開催のため休止
時間:11:00~20:00(10月22日、11月5日は17:00まで)
会場:GOOD DESIGN Marunouchi(千代田区丸の内3-4-1 新国際ビル1階)
⼊場無料


製品詳細

vifu(型式名PE-8N)
https://www.toyotomi.jp/toyotomeets/product/42623
ペレットストーブ最⼤の魅⼒でもある「炎」にフォーカスし、炎の迫⼒を⼗分に感じていただけるよう、燃焼窓を最⼤まで⼤きく仕上げました。継ぎ⽬のない1枚の板⾦からできた扉は、炎の美しさをより引き⽴ててくれます。

審査員のコメント
どんなに環境に良いプロダクトであっても、やはり魅力がないものを人が求めることは期待しにくい。ペレットストーブの裾野を広げるために「炎の美しさ」にこだわる製品企画が明快であり、共感を覚える。外装内装ともにシンプルな板金部品で構成されており、整理された外観と大きな燃焼窓を生み出し、炎をより美しく魅せることに成功している。その結果製造コストを抑えることにもつながっている点は、デザインの良例そのものである。

担当の審査員
玉井 美由紀 川上 典李子 北川 大輔 松本 博子 吉泉 聡 Xiaoxi Shi


宿営暖房I型(型式名KS-SDF56)
https://www.toyotomi.jp/toyotomeets/product/42524
自衛隊指定国防色を使用した特別カラーのオリーブドラブ、ガードと一体となった重厚なデザイン、高い機能性が大きな反響を呼び、発売から間もなく売り切れに。現在再発売中(2023/10/5時点)。

審査員のコメント
暖房器具はインテリア空間に馴染むものが好まれるために、空間に合わせてすでに様々な製品がある。この「ストーブ」は自衛隊で使われている仕様を民生用に作り替えたということで、実績から来る信頼感やアウトドア、タフネスに対する親和性が高く、そのイメージをデザインで表現した。機能に特化した、質実剛健なその佇まいは飽きることなく使うことができ、ガレージや屋外、パブリックの場だけでなく、室内でもタフなスタイルを好むユーザーのための新たな選択肢となったのではないか。多様化するライフスタイルの中で、ありそうでなかったロングライフとなりうる選択肢を提供している点が評価された。

担当の審査員
玉井 美由紀 川上 典李子 北川 大輔 松本 博子 吉泉 聡 Xiaoxi Shi


RR-GER25 GEAR MISSION赤熱対流形
https://www.toyotomi.jp/toyotomeets/product/39666
従来モデルのRR-GE25をより無骨なタンクデザインに変更し、さらには側面部も暖かい赤熱燃焼方式にアップデートすることで、あらゆるシーンで活躍できる製品として進化しました。

審査員のコメント
自然に対する関心の高まりとともに、アウトドアで過ごす時間を求める人々が増えている。それらアウトドアライフを満喫しようとする人々の思いや潜在的なニーズを受けとめるべく開発された石油ストーブである。赤熱燃焼様式の対流型石油ストープとして十分な暖かさを得られる機能であることに加えて、無駄を省きながらもタフさを表現した姿や深みのある2色のベースカラー、本体や操作部におけるシャープで堅牢性を感じさせる形状など、製品ユーザーを想定しての潔く明快な姿が探られている。

担当の審査員
玉井 美由紀 川上 典李子 北川 大輔 松本 博子 吉泉 聡 Xiaoxi Shi


※本記事に掲載の情報は2023年10月時点のものです。


photo / yamamoto,asai,oshima
interview&text / gambe


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