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2024/1/19

円頓寺商店街の路地に佇む小さな登山口/登山・キャンプ用品店 駅前アルプス

 最近、個人的に名古屋でいいなあと思っている場所が円頓寺(えんどうじ)商店街である。古いもの、新しいものが無理なく自然に調和していて、人も街も長閑で、なんとなくだけど、みんな居心地よさそうに過ごしている気がする。

 近隣の「四間道(しけみち)」は石垣の上に土蔵や町屋が並ぶ1740年頃に形成された歴史のある通りで、名古屋市の町並み保存地区にも指定されている。風情あふれる通りにはおしゃれなカフェ・レストランがあって、歴史の深い建物と現代的なものが驚くほど自然に共存している。

 円頓寺商店街では毎年秋にフランスをテーマにした「パリ祭」が開催され、多くの人々が商店街を訪れる。十数年前まではシャッター商店街になっていた円頓寺商店街は、昔ながらの商店街の魅力を残しながらも新しい価値観を加えて、地元民にも観光客にも愛される場所になった。

 そんな円頓寺商店街のメインストリートを横道に抜けて裏路地に入り込むと、結構ディープで怪しげな雰囲気を漂わせる空間がある。そんな魅力的な場所にある店が「山岳+アウトドア」アイテムをセレクト・販売する「駅前アルプス」だ。今回は駅前アルプス店長、山田さんにお話を伺った。

コンセプトにあっていた
円頓寺商店街

-今回は突然のお願いにも関わらず取材をお受けいただきありがとうございます。

山田さん:いえいえ。こちらこそです。取材していただくことが決まった後、いろいろ他の記事を読ませていただいたんですけど、以前取材に行かれていたカエデバレーアンドヒルの管理人のゆいさんはよくこの店にも来てくれていて。だから面白い繋がりを感じましたね。

カエデバレーアンドヒル記事
https://www.toyotomi.jp/toyotomeets/magazine/40336

-今回、取材をお願いするきっかけになったのは、シーズンストーブ「MOVIE THEATER」を駅前アルプスで展示・販売していただいたことでした。セレクトしていただいた理由を聞かせていただけますか?

山田さん:もともと豊川市のSOTOさんとか、岐阜県関市で作っているモキナイフさんとか、なるべく東海地方のアイテムをセレクトするようにはしているんです。なのでストーブを扱うならトヨトミっていうのはなんとなくイメージしていました。そんなときにトヨトミの営業の方からお話をいただいて。

-ストーブの反響はいかがでしょうか。

山田さん:そうですね。見ていただいた方からは可愛いデザインだねと言ってもらえます。これまでのストーブにはないデザインですよね(笑)。

岐阜県関市のモキナイフ

-駅前アルプスはどういった経緯で生まれたお店なんでしょうか。

山田さん:駅前アルプスの創業は昭和45年で長い歴史を持ったお店です。当初は登山専門のお店で初代オーナーが名古屋駅近辺で移転を繰り返しながら成長させてきました。その後、創業から50年のタイミングで「登山とキャンプ」をコンセプトとして矢場町に移転して、2022年9月にこの円頓寺商店街に再移転してオープンしました。

-移転の際に円頓寺を選んだのはどういった理由だったんでしょう?

山田さん:僕がもともと清須の出身で、学生のときは自転車で名古屋駅まで遊びに行ったりしていたんです。円頓寺はそのときの通り道。当時は本当に信号も何もない抜け道みたいな感じだったんですけど、数年前にこのあたりに来てみたらすごく発展していた。古いもの、新しいものが融合した街ということが駅前アルプスのコンセプトに近いものがあると思ってここに決めました。

-外観は古い民家のような佇まいです。オープンにあたってユーザーに受け入れられるか不安はなかったですか?

山田さん:一部の方からは「大丈夫か?」と言われたんですけど(笑)。ここを内見したときに今の姿がはっきりイメージできたんですね。狭いお店だけど、あるべきものはしっかりあってお客様とも近い距離でお話できる。「道具屋」の本来あるべき姿というのは、お客様と会話しながら要望を汲み取って、その人に合った良い製品を提案するということだと思います。それがここでなら実現できるんじゃないかと思いました。

新しいスタイルが
古いものを再評価する
きっかけになる

-駅前アルプスで取り扱っている製品の特徴を教えてください。

山田さん:登山道具に限った話をすると、オーソドックスな山登りを想定した道具をラインナップしています。最近は山を走るトレイルランニングとかなるべく荷物を軽量化したULスタイルなど山登りにも多様性が生まれてきていますが、うちはより基本的な登山向けのアイテムが多いです。

-ザックも登山靴も色々な種類のものがありますね。

山田さん:そうですね。ザックは背面パネルが重要なんです。色々な形のものがあって背中が空いているタイプとか密着度が高いタイプとか、その中間とか。ザックは靴と同じで背中に合っていないとずっと馴染まない。なので幅広くお勧めできるようにメーカー、タイプを揃えていますね。

-新たなスタイルの出現にともなって新興メーカーも増えてきていると思いますが、老舗メーカーの良さというのはどういった部分にあると思いますか?

山田さん:ミレー、オスプレーのような歴史の長いメーカーは何十年もザックを作ってきています。だからこそ革新的なものとかは生まれにくかったりするんですけど、細かいつくりを見るとそのメーカーが培ってきた確かな技術が感じられます。以前に冬の長野でオール電化に近い生活をしたことがあるんですが、そのときに石油ストーブのような本当の炎の暖かさが恋しくなった。それと同じで、新しいスタイルが生まれると、同時に古いものが見直されるきっかけになるんじゃないかと思っています。

-現在の駅前アルプスの在り方にも近いような気がしますね。

山田さん:そうですね。最近は大きなお店に行ったとしても登山靴の紐の結び方すら教えてくれないところも多いと聞きます。知識を持ったスタッフがお客様と近い目線でフラットに案内するようなお店が少なくなっている。うちならお客様に合った登山靴をじっくり説明できますし、逆にここにないものがお客様に合っていると思えば「あの靴も試した方がいいかも」とご案内できる。変わらないスタイルを続けることが駅前アルプスの独自性、存在意義になっているのかもしれないですね。

-たしかに大型店ではなかなかできない接客です。

山田さん:僕は「最終的にはお客さんに判断してほしい」と思っているんです。もちろん色々お話する中でお客さんに合っているのはこれじゃないかなと提案はするんですけど、最終的にはお客様のこれまでの経験とかと照らし合わせてご自身で判断していただく。だから僕はそのためのヒントを与えてあげたいと思っています。

最古参でありながら
最先端のお店に

-ここからは山田さんご自身のお話も聞かせてください。どういった経緯で駅前アルプスでお仕事をされるようになったんでしょうか?

山田さん:もともとはずっとダンサーをしていたんです。ダンサーとして大きな劇団に所属したり某テーマパークで踊ったりしていました。でも32歳のときに大きな怪我をしてしまって。そのときにもう「やりきった」と思えたからダンスをやめました。

-やめた後はどうされたんでしょう?

山田さん:お休みの期間があったので資格を取ったりしつつ、しばらくしてから旅行会社に就職しました。それがお客さんを連れて海外の山に行くツアーをおこなう会社で。そこで働き出して、国内だけじゃなく海外の山にも仕事やプライベートで行くようになりました。先輩方も山・旅行・接客のプロフェッショナルですごく素敵な仕事だったんですが、コロナ禍で海外への渡航ができなくなってしまった。それからは名古屋に帰って仕事を探してました。そんなときに駅前アルプスが求人を募集していて。

-それが駅前アルプスで働きはじめたきっかけ。

山田さん:そうですね。その当時は矢場町にお店があったんですが、入ってすぐにお店を畳むという話が出てきて、そこからが大変でした。移転してお店を続けるかどうかの話があって、もしやるならお店を引き継がないかという打診があって。やると決まったら物件を探して、物件が決まったら内装をDIYして在庫を準備して。準備期間がほとんどない中でなんとか作ったのがこのお店です。

-すこし変化球な質問なんですが、これまでの人生で影響を受けた映画や本はありますか?

山田さん:そんな質問もあるんですね(笑)。映画は「クライマー パタゴニアの彼方へ」という作品ですね。デビッド・ラマという実在のクライマーが「絶対に不可能」と言われた南米パタゴニアの山へのフリークライミングでの登頂に挑戦する姿に密着したドキュメンタリーです。これまでの既成概念を覆して、新しい文化が生まれ、それにともなって新しい技術や道具が生まれる。まだまだこれからも新しいことができるという気持ちにさせてくれる映画ですね。
 本はガストン・レビュファの「星と嵐」。様々な場所で見た景色を詩的に表現していて、この本を読むと僕もそこへ行きたくなります。星空とか山肌とか普段見ているものなんですけど、すごくロマンティックに表現されているんですね。いわゆる名著と呼ばれる本なので、機会があったらぜひ読んでみてください。

-ありがとうございます。それでは最後にこれからの駅前アルプスの目標についてお聞かせください。

山田さん:駅前アルプスは創業のときはここみたいな一軒家で始まったらしいです。だから望んでそうなったわけではないけど、ある種、今の姿は原点回帰なのかなと思っています。目指しているのは、『最古参でありながら最先端』であること。ギアもトレンドのものを置いてはいるんだけど、素晴らしい歴史を持った靴、ザック、テントも揃えていて、ひとつひとつのギアをしっかりお客様に説明できる。それはこの規模だからこそできることだと思います。今は登山もいろんなジャンルに枝分かれしていると思いますが、「基本的な山登りなら駅前アルプス」というスタイルは離れないようにこれからもやっていきたいと思っています。


ご紹介したお店

【駅前アルプス】
住所:〒451-0042 愛知県名古屋市西区那古野1-20-3-2階
営業時間:平日12:00-19:30 土日祝日11:00-18:00
定休日:月曜・火曜
(営業時間・定休日について詳しくは公式WEBサイト・公式SNSをご確認ください)
電話番号:052-990-4014
公式WEBサイト:https://www.ekimae-alps.co.jp/
公式Instagram:https://www.instagram.com/ekimae.alps/
公式Twitter:https://twitter.com/ekimaealps

【円頓寺商店街】
地下鉄桜通線「国際センター」駅下車、2番出口より北へ徒歩8分
公式WEBサイト:https://endojishotengai.com/home.html


ご紹介したストーブ

SEASON STOVE 2023『MOVIE THEATER』
毎年テーマが変わるシーズンストーブの第2弾。
https://www.toyotomi.jp/products/heating/convection/seasonstove2023/rl-se2523


※本記事に掲載の情報は2024年1月時点のものです。


photo / oshima
interview & text / gambe


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