名古屋にCircles(サークルズ)という自転車屋がある。自転車に乗ることのない僕でも、なんとなく存在を知っているくらい、その活動の幅は広く、多くの人々にその名前を知られている。サークルズではカスタム自転車などをメインに、“自転車を楽しむ”ためのアイテムを厳選してセレクト、販売している。そのため手掛ける業態は自転車にとどまらず、アパレル、飲食など多岐に渡る。
東京・虎ノ門への出店、またECサイトを通じて、海外にもその製品を出荷、販売するなど、様々な角度からワールドワイドにファンを増やし続けている自転車の名店だ。
今回はそんなサークルズの司令塔として様々な角度から発信を行うセールス&マーケティングディレクターの木村昌史さんにお話を伺った。
「サークルズが目標にしているのは、“自転車を入口にして色々な文化に触れてもらう”こと。自転車ってお金がかかる趣味ではあるんですけど、突き詰めていけば、ただの移動手段なんですね。子供の頃から乗っているもので目的地に向かうための道具。だから様々な文化を楽しむために、またツールとして自転車に触れてほしいと思って色々やっています」
木村さんはそう話す。木村さんがサークルズの中で果たしている役割はどんなものなのだろうか。
「すごく簡単に説明すると、クリエイティブディレクション的なことをしながらマーケティングをやっています。売り場にはそんなに立たないんですけど、商品をどうやったら上手く見せられるかとか、お店のことをどうやったら多くの人に知ってもらえるかとか、そんなことを考える仕事ですね。なので、商品のディレクション、ブログ記事の撮影やライティング、動画の企画とかをやっています」
木村さんの記事はとても素敵だと思う。そこには文化への愛、そして自分たちの製品、働く人たちへの愛が感じられる。特に良いなと思った記事は、民藝における手仕事と現代の工場、そこにオリジナル商品を絡めて紹介した記事(※)だ。
※記事 Dickies, “FIT YOU, FIT YOUR JOB”
https://circles-jp.com/products-news/169101/
「嬉しいです。もともと僕は写真と文章が好きで。なので単純にその二つを掛け合わせてできる仕事って考えたときにやれるのがああいうブログだったんですね。記事は自分がシンプルにいいなと思ったことだったり、サークルズは海外のお客様も非常に多いので、そういった民藝とか日本の文化的な背景などと絡めて製品を紹介するようにしていますね」
さらにSNSで発信している動画のディレクションなども行っている。
「前に作ったのが、サークルズのスタッフがただホイールを作っているだけの動画なんですね。彼はそういう作業を日々行って、年間で言うと200本以上のホイールを作ります。だから職人として上手っていうのは当然なんですけど、そこまで行くと、変な話、作業している姿に『色気』が生まれてくる。そういうのをユーザーの人にも伝えたいなって思って発信しています」
記事や動画の制作、そして商品の企画、ある部分ではすべて共通していると木村さんは言う。
「僕はすべて一種の編集作業だと思っているんですね。編集が好きなんだと思います。自転車そのものを作るのも、販売するのも一つの編集作業です。結局はどれも異なる視点のモノを組み合わせて新しい面白さを作り出していくということだと思うんですけど。なんかそういうことが好きなんでしょうね。多分」
取材させていただいたご自宅では高火力のKS-67Hのホワイトが使われていた。これ以外にもいくつかストーブを持っているという木村さん。そんな木村さんがあえて選び、愛用しているのがこのKS-67Hなのだという。
「僕はなんか人の意図が見えすぎるとあまり魅力を感じないんですよね。『こう思ってほしい』というのが透けて見えるような製品にあまり魅力を感じない。このストーブは機能だけがそのまま製品になっている感じがします。そこが最高だなと思いますね」
「デザインされすぎていない良さですよね。変に『かっこよくしてやるぞ』とか『おしゃれにしてやるぞ』っていう気がないのが製品のオリジナリティになっていて独自の魅力になっている気がします」
木村さんの自宅の棚には、たくさんの本やレコードが保管されていた。ソール・ライター、スティーヴン・ショア、エグルストンの写真集。The Who、Radio Head、Talking HeadsのレコードやCD。そこから木村さんの文化的な背景が少しだけ読み取れるような気がした。
「こういった海外の文化に触れるようになったきっかけは、ビートルズの『リボルバー』というアルバムから。音楽、映画、小説。こうした文化はそれぞれ独立しているわけではなくお互いに密接に関わっていて、僕に影響を与え続けていると思います」
実際にサークルズでは人気イベント“森、道、市場”と自転車を通じて深く関わっており、またサークルズの隣で運営するアメリカンブレックファストの専門店“EARLY BIRDS BREAKFAST”では2022年にサニーデイサービスの曽我部恵一氏を招いて店内でコンサートを行うなど、“食”⇔“自転車”⇔“音楽”と自然な形で双方向に文化を繋げている。自転車は文化という目的地を行き来する移動手段でもあるのかもしれない。
今回、サークルズの店内にもお邪魔させていただいた。サークルズでは、様々な自転車が販売されている。そこでどんな自転車がおすすめか聞いてみた。
「自転車のデザインや機能だけを見て決めてしまいがちなんですが、まず何をして遊びたいかを決めるといいと思います。そうすると一番自分に合っている自転車が選べる。“街で乗るからとにかくかっこいいやつ”でもいいし、“旅に出たいから頑丈なやつ”でもいい。自転車を使ってどんなことがしたいかというのを明確にしておくといいと思います。包丁でもそうですよね。魚を捌く包丁と野菜を切る包丁。用途によっておすすめは全然変わってくるので」
サークルズは他の自転車屋で購入した人の修理も対応しているのだという。これは業界では珍しいことなのだそうだ。
「他店修理ってだいたい断られるんですよ。だから壊れると、いろんなお店をたらい回しにされて、困った人が最後に辿り着くのがサークルズ。断らないから(笑)。でも自転車って移動手段なんです。それがなくなったら死活問題という人もいる。だからうちではできるだけ修理を受け付けるようにしています。あと、ここで自転車を購入してくれた人には割引で修理していますね」
サークルズにはいろんな人がいる。恰幅のいい男性もいれば、小柄な女性もいるし、年齢層も幅広い。そして全員がそれぞれの個性を持っていて、その個性を活かして働いているように見える。共通しているのは、自転車が好きで、文化的なことが好きなことなのだという。
「自転車が好きな人ってほんとにいろんなタイプの人がいると思います。自転車に対してはみんな平等なんですよ。体格とか年齢とか関係なく誰もが楽しめる。子供の頃からほとんどの人が乗ったことがあって、運動音痴な人でも不思議と乗れるのが自転車。だから僕なんかもそうですけど、スポーツはしないけど自転車は好きって人が結構います。みんな平等なんです」
大人になってから、自転車という存在をどこか敷居が高いもののように感じていた。でも木村さんの話を聞いていて、かつて自転車が自分の最良の相棒だったことを思い出していた。子供の頃、自転車は誰にでも平等な存在として身近にあった。
「自転車って個人種目なんです。自分との対話をしながら走り続ける。だからきっと合っていると思いますよ」
最後にサークルズが目指すこれからの目標を聞いてみた。
「サークルズをどこの自転車屋にも似ていないお店にしていくのが僕の目標。だからそのためにいろいろやっていこうと思っています。自転車で唯一求められる経験ってたぶん“我慢したことがあるかどうか”なんです。ほんとに辛いときを耐えて乗り切ったら次は下り坂になる。新しい何かを生み出すには痛みがともなうけど、自転車に乗る人はその先にある素晴らしい瞬間を知っているんですね。そんな感じで頑張っていこうと思っています」
ご紹介した場所
【Circles NAGOYA(サークルズ】
住所:〒460-0012 愛知県名古屋市中区千代田4-14-20
営業時間:10時〜19時
定休日:水曜・木曜
(営業時間・定休日について詳しくは公式WEBサイト・公式SNSをご確認ください)
電話番号:0561-84-7123
公式WEBサイト:https://circles-jp.com/
公式instagram:https://www.instagram.com/circles_jp/
公式X:https://x.com/circles_jp
ご紹介したストーブ
※本記事に掲載の情報は2024年12月時点のものです。
photo / yamamoto
interview & text / gambe
Other Contents
Products
私たちが誠意をもって直接お届けいたします
公式ECショップのみの
限定商品も多数取り揃え
長くご利用いただいた
消耗部品のパーツ販売